日本にまだなかった一皿を形にする――“サラダパスタ”という未踏領域から生まれる食の可能性
XeroJapan株式会社 代表取締役 青山 凌大
2021年3月31日、東京都港区芝公園。この地に、日本で初めて“サラダパスタ専門店”を掲げる店舗が誕生した。店名は「SalaSpa(サラスパ)」。国産食材と季節感を軸にしたメニュー構成は、健康志向と食の楽しさを同時に満たし、オープン以降、着実に支持を広げている。この店を運営するのがXeroJapan株式会社だ。代表を務める青山凌大さんは、「まだ誰もやっていない領域にこそ、価値がある」と語る。原動力となっているのは、未知への好奇心、そして幼少期から胸に抱いてきた、ある強い想いだった。
「好き」だけでは通用しないと知った、その先に
青山さんの原点は、驚くほどシンプルだ。「とにかくパスタが好きだった」。幼い頃から家族で外食をする際は、決まってパスタ店を選んでいたという。
高校卒業後、「食の世界で生きたい」と調理師専門学校・エコール辻東京へ進学。しかし、現場で包丁を握るうちに、自身の適性を冷静に見つめ直すことになる。「料理人としてのセンスが、正直足りないと感じたんです」。
そこで方向転換を決断。料理そのものではなく、店舗運営、接客、数字管理、企画といった“経営の側”から飲食に関わる道を選び、イタリアンレストランで店長やディレクターとして経験を積んでいった。
その背景には、もう一つの大きな動機があった。幼少期、母親はシングルマザーとして兄弟を育て上げていた。「母のように、一人で懸命に生きる人を支えられる会社をつくりたい」。その想いは、独立への意志として静かに積み重なっていく。
コロナ禍が突き動かした、背水の決断
転機は、2020年春。緊急事態宣言直後、勤めていた会社が全社員解雇を決定。突然、仕事を失うことになった。「アルバイトスタッフを守りたい」その気持ちとは裏腹に、現実は厳しかった。結果として守れたのは、自分自身の“次の居場所”だけだったという。
同年4月30日、ゴーストレストランという形で「SalaSpa」をスタート。“サラダパスタ”という聞き慣れないジャンルに、否定的な声も少なくなかった。それでも青山さんは、「冷たいパスタだからこそ、新しい食体験が生まれる」と信じ、歩みを止めなかった。そして2021年、港区に実店舗を構える。未知だった一皿は、ようやく多くの人の前に姿を現すことになる。
誰が作っても、同じ美味しさを届けるために
将来的な店舗展開を見据えたとき、青山さんが重視したのは“再現性”だった。通常の温かいパスタは、火加減や塩加減など、作り手の感覚に左右されやすい。「強火」「ひとつまみ」という曖昧さが、味のばらつきを生む。
一方、サラダパスタは工程が比較的シンプルで、冷却・盛り付けが中心。オペレーションを標準化しやすく、誰が作っても安定した味を出しやすい。「料理が得意ではない自分でもできるなら、他の人にもできるはず」。その視点が、ビジネスモデルとしての強みに変わった。
また、コンビニでサラダパスタが支持されていたこと、和風ドレッシングとパスタの相性を現場で感じていたことも、この発想を後押しした。
実店舗オープン後は反響が広がり、メディア露出も増加。開店から1年と3ヶ月でコンビニエンスストアとの共同商品開発が始まった。
国産食材で紡ぐ、「和」と「輪」
SalaSpaが掲げるコンセプトは、「和の食材で、輪をつくろう」。日本各地の食材に光を当て、その魅力を最大限に引き出すことを大切にしている。
看板商品の一つ「岩手県産“岩中豚”和風豚しゃぶサラスパ」は、脂の甘みとビタミンEの豊富さが特徴。「鹿児島県産”赤鶏さつま”バジルチキンサラスパ」は、旨味と歯ごたえのバランスに優れた逸品だ。いずれも全国の食材を食べ比べた末に選び抜かれたものだという。
季節限定メニューの開発にも余念がない。旬の国産食材を中心に、多くの人が楽しめる味を追求する。「徳島県産すだちぶりの和風サラスパ」のように、生魚を合わせられるのも、冷たいパスタならではの表現だ。
現在はフランチャイズ展開に向けた準備も進行中。目標は全国100店舗。ただし、冷製パスタという特性上、寒冷地での需要など課題も多い。それでも「未知だからこそ挑む価値がある」と、青山さんは前を向く。
理念が人をつなぎ、組織を育てる
チームづくりで何より重視しているのが、理念の共有だ。XeroJapanが掲げる言葉は「感謝の気持ちと想いやりを心に」。
シンプルだからこそ、実践が難しい。飲食業は、食材、生産者、仲間、そしてお客様との感謝の連鎖で成り立つ仕事だ。だからこそ、まず人としての在り方を大切にしたいと語る。
社名の「Xero」は「Zero」ではなく、「未知(X)」を意味する造語。前例に倣うのではなく、自分たちの手で価値を生み出したいという意思が込められている。「Japan」を冠したのも、日本の文化や食を誇りとして世界に発信したいという想いからだ。
実際、社内には飲食業未経験者や他業種出身者も多い。XeroJapanを「可能性が広がる場所」にしたい――それが、青山凌大さんの描く未来図である。
【企業情報】
XeroJapan株式会社
- 本社住所:
- 〒105-0014 東京都港区芝2-16-10 芝パークアベニュー1F
- HP:
- https://salaspa.com/
- 設立:
- 2020年10月
- 代表取締役:
- 青山 凌大