一つの信念が、困難を力に変える――声に耳を澄まし、進化を続ける作業服専門チェーンのかたち

生活者視点イノベーション部門

株式会社ワークマン 代表取締役社長 小濱 英之

1979年の創業以来、作業服専門チェーンとして成長を続けてきた株式会社ワークマン。建設業や土木業、運送業など、現場で働く職人に向けて、とび服やつなぎ、安全靴といった作業用品を、高品質かつ低価格で提供してきました。同社の根幹にあるのは、「声のする方へ、進化する。」という社是。時代や業界の変化に合わせるのではなく、常にお客様の声を起点に意思決定を行ってきた点が、ワークマンの大きな特徴です。作業服の枠を超え、新たな顧客層を取り込むまでに至った背景には、どのような考えがあったのか。小濱英之氏に、その歩みと経営の軸について伺いました。

すべての起点は「お客様の声」にあった

女性をメインターゲットとし、従来の作業服を扱わない新業態として誕生した「#ワークマン女子」。このブランドも、決して一方的な戦略から生まれたものではありませんでした。

実は「#ワークマン女子」という名称は、公式発表以前からSNS上で自然発生的に使われていたハッシュタグでした。「子どもと公園に行っても、撥水機能があるから汚れを気にせず過ごせる」といった投稿が増え、一定の支持を集めていたことがきっかけとなり、そのままブランド名として採用されました。

発表当初は、「女子という表現は時代に合わないのではないか」「“マン”と“女子”が混在していて違和感がある」といった声も寄せられました。しかしワークマンは、そうした意見も含め、すべてを“声”として受け止める会社です。実際の利用者の反応を丁寧に拾い上げながら、女性向け店舗や商品展開を本格化させていきました。

強みは、現場で培った技術力にある

ワークマンが長年培ってきたのは、防寒性・防水性・耐久性に優れた高機能な作業服を生み出す技術力です。その強みを活かしつつ、トレンドを意識したデザインを取り入れたレディース商品を展開したことで、従来とは異なる顧客層の来店が増加。結果として、大幅な客層拡大につながりました。

機能性を妥協しない姿勢は、作業服からアウトドア・スポーツウェアへと領域を広げた現在も変わっていません。現場で求められる実用性を知り尽くしているからこそ、日常使いのウェアにも確かな価値を提供できています。

変化を恐れず、選ばれるブランドへ

多くの人に親しまれ、社員からも愛着を持たれていた「#ワークマン女子」ですが、2025年1月に「Workman Colors」へとブランド名を変更しました。背景にあったのは、「男性が入りづらい」「男性向け商品があるか分かりにくい」といった声でした。実際には当初からメンズ商品も扱っていたものの、名称のイメージが来店のハードルになっていたのです。

そこで、性別を問わず、さまざまなスタイルを楽しめるブランドとしてコンセプトを刷新。名称変更後、男性客が約10%増加した店舗もあり、一定の成果を実感しています。

今後、「Workman Colors」という名称も、再び見直す可能性は否定しません。しかしそれは、ワークマンにとって自然な選択だと小濱氏は語ります。「声を聞かなくなったとき、進化は止まる」。これまでの歩みが、その確信を裏付けています。

信念を軸に、これからも進化を続ける

社会に出て働く中で、誰もが迷いや壁に直面します。そんなとき、自分の中に一本の信念があれば、進むべき道を見失わずに済むはずです。ワークマンが大切にしてきたのも、まさにその“信念”でした。

お客様の声を起点に、柔軟に形を変えながらも、本質は決してぶらさない。その姿勢こそが、困難を力に変え、成長を続けてきた理由なのです。

【企業情報】

株式会社ワークマン

本社住所:
〒372-0824 群馬県伊勢崎市柴町1732
HP:
https://www.workman.co.jp/
設立:
1979年11月
代表取締役:
小濱 英之