美容師が報われる業界をつくる
労働環境を変え、地域へ恩を返すという経営の選択
株式会社ワンダフルライフ 代表取締役 今井 啓敦
株式会社ワンダフルライフは、美容室向け資機材の卸売を起点に、美容室経営の支援、自社サロンの運営、そして地域貢献活動までを一体で展開している企業である。同社の経営を貫く軸は明確だ。「美容師が幸せに働ける業界をつくること」、そして「事業で得た価値を地域に返すこと」である。長時間労働、低賃金、将来不安。長年、美容業界に根付いてきた構造そのものに向き合い続けてきた代表・今井啓敦氏に、経営の原点と現在地、そして未来への構想を聞いた。
美容師が疲弊する業界構造への、強い違和感
今井氏は美容師ではない。商材販売の立場から美容業界に関わってきた。だからこそ、業界を外側から俯瞰し、冷静に見つめることができたという。
目に映ったのは、あまりにも疲弊している美容師たちの姿だった。朝早くから夜遅くまで働き、休日も少なく、将来の見通しが立たない。本来、人を美しくし、前向きな気持ちにする仕事であるはずなのに、働く本人が幸せそうではない。
「この構造を変えなければ、業界に未来はない」そう強く感じたことが、現在の事業の原点である。
値引きではなく、労働環境を良くするための経営支援
美容業界では、商材を大幅に値引きして販売することが半ば常識となっている。しかし、利益が削られた先にあるのは、現場の負担増と人件費の圧迫だ。ワンダフルライフは、そのやり方を選ばなかった。「値引きはしない。その代わり、美容室の売上と利益を上げる支援をする」
売上が伸びれば、給料を上げることができる。休みを増やすことも、労働時間を短くすることもできる。美容師が“我慢”ではなく、“納得”して働ける環境をつくることができる。
そのために、同社は経営や組織づくりに踏み込んだ支援を行ってきた。さらに、理論だけでは説得力がないと考え、自ら美容室を運営し、「実際にできる」ことを現場で証明している。
「長く働ける美容室」を、自社で実証する
美容師個人の努力や根性に依存する経営には、必ず限界が来る。だからこそ今井氏は、属人性を排し、仕組みで回る店舗づくりを重視してきた。
自社サロンでは、完全週休二日制、一般企業に近い就業時間、昼休憩の確保、有給休暇の取得、社会保険の完備を実現している。また、美容師免許が不要な業務は事務・清掃スタッフが担い、美容師が本来の仕事に集中できる体制を整えている。給与水準は業界平均より高く、ボーナスも支給する。「美容師は報われにくい仕事」という固定観念を、現場から覆してきた。
美容師が心身ともに余裕を持って働けるからこそ、顧客満足度も上がり、結果として経営も安定する。それが、今井氏の考える“持続可能な美容室経営”である。
事業で得た価値は、地域へ返すのが当然だ
ワンダフルライフの経営は、業界だけで完結しない。知多半島で商売をさせてもらっている以上、地域への恩返しは当然だという考えがある。象徴的なのが、ビーチクリーン活動「WONDERFUL CHITA」である。地元の海岸が全国でも汚れていると知り、見て見ぬふりはできなかった。
どうせやるなら、楽しく、続く形で。子どもも参加しやすい工夫を凝らし、イベントとして育ててきた結果、活動は5年目を迎えている。
楽しさがあるから人が集まり、共感が広がり、継続につながる。地域貢献もまた、仕組みづくりが重要だと考えている。
次の世代へ、未来を手渡す取り組み
現在準備を進めているのが、「フューチャー知多奨学金」である。知多半島の子どもたちを対象に、返済不要の奨学金を提供する仕組みだ。地域で生まれた利益を、地域の未来へ還元する。短期的なリターンではなく、次の世代への投資である。
今後は、美容と健康を軸に飲食分野への展開も構想している。雇用を生み、地域の中で価値が循環する形をつくっていく考えだ。
美容師も、地域も、誇れる未来へ
今井氏が大切にしているのは、「誠実さ」と「楽しさ」である。働く人が笑顔でいられること。地域に胸を張れること。
美容師が報われ、地域に必要とされる存在であり続けるために。ワンダフルライフはこれからも、業界の構造と地域社会の双方に向き合い続けていく。
【企業情報】
株式会社ワンダフルライフ
- 本社住所:
- 〒479-0033 愛知県常滑市中椎田24-12
- HP:
- https://wonderfullife.jp/
- 設立:
- 2008年6月
- 代表取締役:
- 今井 啓敦