「B型事業所=下請け」という常識を覆す、新しい就労支援のかたち

就労支援部門

株式会社Wingrin 代表取締役 藤根 羽矢人

就労継続支援B型事業所と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「企業の下請け作業」「低単価」「単調な仕事」といったイメージかもしれない。しかし、茨城県牛久市に拠点を置く株式会社Wingrin が運営する「就労継続支援 B 型 Color Sheeps」 は、その固定観念を根底から覆している。フルーツ大福や鰻、アクセサリーなどの自社商品を自ら企画・製造・販売し、利用者の工賃は全国平均の2倍以上。さらに、異業界出身のスタッフが数多く集まり、閉鎖的になりがちな福祉業界に新しい風を吹き込んでいる。
代表の藤根羽矢人氏に、事業に込めた思想と組織づくり、そしてその先に描く未来を聞いた。

仕事の“値段”を自分たちで決めるという選択

Color Sheepsの最大の特徴は、自社商品を軸にした就労支援だ。代表的な商品であるフルーツ大福は、牛久市のふるさと納税返礼品にも採用され、地域とのつながりも生んでいる。

一般的なB型事業所では、企業から請け負った作業をこなすケースが多く、作業単価は外部に委ねられがちだ。なかには「1個0.2円」という、価値を感じにくい作業も存在する。

藤根氏は、そこに強い違和感を抱いてきた。

「国は“誰もが活躍できる社会”を掲げていますが、0.2円の仕事を与えられることは、『あなたの仕事にはそれだけの価値しかない』と言われているように感じてしまうんです」

だからこそ、Wingrinは自社で商品をつくり、自分たちで単価を決める道を選んだ。加えて、企業からの仕事も原則として直請け。最近では企業側から声がかかるケースも増え、食品加工や、国指定重要文化財のワイナリーにおけるトイレ清掃といった業務も任されている。結果として、利用者の工賃は全国平均の2倍以上に到達した。

「やらされる仕事」ではなく、「選べる仕事」を

現在Color Sheepsでは、7種類以上の仕事を用意している。その中には、アクセサリー制作や化粧品開発、PC作業など、利用者の「やってみたい」という声から生まれた仕事も少なくない。

藤根氏が大切にしているのは、まず声を受け止めることだ。「実現できるかどうかは別として、まず否定しない。その人の中にある独創性を、できるだけ形にしたいんです」

得意なことも、苦手なことも、人それぞれ違う。だからこそ仕事の選択肢を増やし、「自分に合った働き方」を見つけられる環境をつくることが、就労支援の本質だと考えている。

「友達」ではなく「仲間」であるために

Wingrinには、正社員だけで10名強のスタッフが在籍している。平均年齢は30代前半と、福祉業界の中では比較的若い組織だ。外から見ると、仲が良くフラットな雰囲気に映るかもしれない。だが、藤根氏は「友達のような関係」を目指しているわけではないと言う。

「仲間とは、同じ“目的”を共有できる存在。目標はいくつ変わってもいい。でも、根っこの目的だけはブレてはいけない」

ときには厳しい言葉を投げかけることもある。その代わり、やりきったときの達成感は、全員でしっかり分かち合う。普段は冗談を言い合い、社長である藤根氏がいじられて笑いが起きることも珍しくない。

「社長が偉いわけじゃない。役割が違うだけ。現場で利用者さんを支援してくれているみんなの方が、正直すごいと思っています」

異業界出身者が多い理由は「新しい視点」にある

Wingrinでは、異業種からの転職者が多く活躍している。それは単に人手を集めたいからではない。福祉業界には、今なおFAXが主流だったり、慣習が根強く残っていたりと、閉鎖的な側面もある。藤根氏は、そこにこそ課題があると考えている。

「未経験だからこそ出てくる発想が、利用者さんが社会とつながるための新しいきっかけになる」

異なる業界の常識を持つ人材が入ることで、組織は柔らかくなり、選択肢が広がる。

それが結果的に、利用者にとってもプラスになるという考えだ。

A型事業所で芽生えた確信と、B型への挑戦

藤根氏はもともと、大手機械メーカーで営業職としてキャリアをスタートさせた。その後、飲食店の役員を務め、さらに縁あって社会福祉事業を立ち上げるオーナーと出会う。

現在も経営に関わる株式会社OHANAでは、就労継続支援A型事業所の雇われ社長として事業をスタートさせた。「独立するなら、社会福祉の分野だと決めていました」

理由は二つある。ひとつは、介護や障害者支援が今後も確実に必要とされる分野であること。もうひとつは、子どものころから、社会的弱者へのいじめや理不尽が許せなかったことだ。

A型事業所では、引きこもり状態だった利用者が社会復帰を果たし、メディアに取り上げられるまでになった。やがて定員が埋まり、「もっと多くの人に場を広げたい」と考えたことが、B型事業所に特化したWingrin設立のきっかけとなる。

立ち上げ当初、周囲からの反応は決して好意的なものばかりではなかった。「ぽっと出の施設が何を言っているんだ」「異業種から来たチャラチャラしたやつが」そんな声を耳にすることもあった。だが藤根氏は、それを逆にエネルギーへと変えた。

「じゃあ、茨城で一番飛躍してやろう」と。その後、茨城障害者支援協議会を立ち上げ、理事の1人として他施設との交流を深めながら、事業を着実に成長させてきた。

生活介護事業の開始と、次の展開へ

Wingrin では現在、就労継続支援 B 型事業を軸としながら、生活介護事業を新たに立ち上げるなど、支援の幅を広げる事業展開を進めている。働くことを中心に据えた支援に加え、日中の居場所や生活面のサポートまで視野に入れることで、利用者一人ひとりの状況に応じた、より柔軟な関わりを実現していく考えだ。

藤根氏は、「就労か、生活か、と分けて考えるのではなく、その人の今の状態に合った支援を用意することが大切だと思っています」と語る。

今後は、生活介護事業と就労支援事業を連携させながら、将来的にはグループホームなどの住まいの支援も含め、暮らしと仕事を一体で支える体制づくりを構想している。段階的な事業展開を通じて、地域の中で長く寄り添い続けられる支援のかたちを目指していく。

【企業情報】

株式会社Wingrin

本社住所:
〒300-1234 茨城県牛久市中央4-5-1
HP:
https://wingrin.jp/
設立:
2022年12月
代表取締役:
藤根 羽矢人