地盤の専門家として、「正解のない領域」に挑み続ける
社会インフラを支えるリソスフェアの仕事哲学

社会基盤技術部門

株式会社リソスフェア 代表取締役 岡本 幸次

地盤調査や地下水解析など、社会インフラを根底から支える領域で事業を展開する株式会社リソスフェア。調査結果は、防災対策や公共工事のみならず、温泉・井戸といった地下資源の活用にも生かされている。目に見えない地中を扱うこの分野で、同社が積み上げてきた信頼の源とは何か。代表取締役の岡本幸次氏に、創業の経緯から仕事への向き合い方、業界の未来までを聞いた。

「正直であること」を貫く。それがすべての基盤になる

岡本氏がリソスフェアを立ち上げたのは2007年。当時は建設業界全体が不況にあえぎ、周囲では倒産する企業も少なくなかった。「このまま一会社員として働き続けることに、強い不安を感じたんです」そう語る岡本氏は、自ら事業を起こす道を選んだ。

社名の「リソスフェア(Lithosphere)」は、地殻とマントル最上部を指す地学用語。創業前から決めていたというこの名前には、「地盤を工学的な解釈だけで終わらせず、より深い領域まで明らかにしたい」という思いが込められている。

創業当初は、前職で取引のあった顧客には一切声をかけず、完全なゼロからのスタートだった。それでも現在では、全国各地から依頼が舞い込むようになっている。

同社が一貫して大切にしてきたのが、「正直であること」。地盤調査は、成果の大半が目に見えない世界の話だ。意図的に手を抜こうと思えば、いくらでもごまかしが利いてしまう。

「でも、私たちの調査結果の先には建物が建ち、道路が通り、人の生活があります。もし不十分な仕事をしてしまえば、人命に関わる可能性もある。そう考えると、いい加減な仕事をする自分を想像するだけで恐ろしくなるんです」

「答えがない仕事」だからこそ、仮のゴールを置く

リソスフェアの仕事は、「ここにこういう答えがある」と決まっているものではない。未知の地盤状況を調べ、そこから最適解を導き出していく――まさに答えを“つくる”仕事だ。

だからこそ、同社が成果品で重視しているのは「お客様の納得感」。一つひとつのリスクに対して、色分けした図や写真を用いて視覚的に示し、どこにどんな懸念があるのかを丁寧に伝える。加えて、お客様が気にしているポイントに対する結論を、曖昧にせず明確に提示することを心がけている。

業務を進めるうえで岡本氏が意識しているのは、最初に仮のゴールを設定することだ。

「まずは仮説を立てて、『この方向で進めよう』と逆算する。途中でズレに気づいたら修正すればいいんです」

特に、トラブルを抱えた物件を扱う場合、対応の遅れが何万人もの生活に影響を及ぼすこともある。答えが見えない仕事だからこそ、あらかじめ見通しを立てることで工程が整理され、スピードと確実性の両立が可能になるという。

地道な積み重ねが支える「地盤モデル」という強み

同社の仕事の中でも、顧客から特に評価されているのが「地盤モデル」の精度だ。地すべり対策であれ、橋梁建設であれ、対策を考えるためには「その地盤がどうなっているのか」を正しく表したモデルが欠かせない。

「モデルが間違っていれば、当然ゴールも誤ってしまいます。そうなると、どれだけ対策を講じても課題は解決できません」

地盤モデルの構築は、決して派手な作業ではない。地道で根気のいる工程の連続だ。しかし、その積み重ねこそが、設計や施工といった次の工程を支える土台となっている。

環境変化を読み、立ち位置を柔軟に変えていく

新規分野でも、投資と実践を進めている。その中で、新規事業として配管を腐らせる「迷走電流「電蝕」」に着目し、調査・対策を掲げ、コンソーシアム形式で始動開始を済ませた。

配管の漏水が始まると、外構の目地が広がるとともに、1階のクローゼットにカビが生え、床下が腐るという。このケース、造成地では盛土崩壊リスクをはらんでいる。

「そうした問題、課題をいち早く捉え、私たちの視点で暮らしを支えていけたらと思っています」

若い芽を守り、業界全体を次につなぐために

地盤調査業界全体を見ると、若手人材の減少は大きな課題だ。だからこそ、岡本氏は次世代の育成や投資も、経験を積んだ立場の責任だと考えている。

「キャリアが長いからといって、威張ったり、若手の成果を横取りするのは論外です。頼りやすい関係をつくって、できる限り力になる」

困ったときに自然と名前が挙がる存在になり、周囲を巻き込みながら業界全体を底上げしていく。その積み重ねが、若い人たちの可能性を広げることにつながると信じている。

AIの進化によって仕事の形が変わる可能性はある。それでも、現場で手を動かし、判断を下すのは人だ。そして、地盤調査という工程が確実に実施されてこそ、設計や施工へとバトンが渡される。

「未来は完全には読めません。だからこそ、今目の前にある仕事に誠実に向き合い、お客様に正直でいる。それが、いま私たちにできる最も大切なことだと思っています」

【企業情報】

株式会社リソスフェア

本社住所:
〒639-3125 奈良県吉野郡大淀町北野91-7
HP:
http://www.lithosphere.jp/
設立:
2010年9月
代表取締役:
岡本 幸次