「支援が不要になるEC」を設計する――ユーザー心理から逆算し、自走する運用をつくる
福岡ECサイト株式会社 代表取締役 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社は、福岡を拠点にECサイト制作・運用支援を行う企業だ。アジアに近い地理的優位を活かし、越境ECや海外進出のサポートにも領域を広げている。東京都のクリエイティブチーム「株式会社猫の手」と連携し、制作・SEO・運用改善までを一気通貫で支える体制を整え、顧客から高い評価を得てきた。同社のスタンスを一言で表すなら、「ずっと頼られ続ける」ではなく、最終的に“支援がいらない状態”へ導くこと。契約が終わっても成果が崩れない仕組みづくりを重視する背景には、鳥井さんの一貫した思想がある。
まず“誠実”を置く。成果はその延長線にある
鳥井さんが最も大切にしている価値観は明快だ。「お客様に対して誠実であること」。制作でも、運用でも、提案でも、この軸は揺らがない。
エンドユーザーが迷わず買えて、買ったあとも納得できる。そうした体験を生めれば、クライアントも喜び、制作側も喜べる。鳥井さんはこの循環を、事業の根本に据えている。
評価が集まりやすいのがSEO領域だという。特徴は、施策を“代行”で終わらせない点にある。契約が終わった瞬間に順位が落ちるのではなく、むしろその後も自社で改善を続け、伸ばせる状態を目指す。実際に、1ページで月間30万PV規模に到達したケースや、運用代行を約1年半行い月商が100万円から2,500万円へ伸びた事例も出ている。
原点は音楽活動。人の流れと感情を読む訓練だった
鳥井さんの原点は、マーケティングの教科書ではなく“現場”にある。幼い頃からアートに親しみ、高校卒業後はカナダへ渡ってアートを学んだ。帰国後は専門学校を経て音楽活動に打ち込むが、ここで培われたのが「人の心理を読む」感覚だった。
ストリートライブは人通りの多い場所でやれば良い――そう思われがちだ。しかし、繁華街の人は基本的に“目的があって”そこにいる。立ち止まっても長くは聴かない。つまり、ファン化しにくい。そこで鳥井さんは逆張りをする。狙ったのはベッドタウンだった。「帰るだけ」という心理状態なら、耳を傾ける余白がある。新宿での本番ライブに向けて、立川・大宮・柏・松戸などを回り、事前にストリートで接点を作った結果、本番では1,000人規模の集客に成功した。
この経験が、今の仕事に直結している。「ユーザーはどんな状態でページに来るのか」「どこで迷い、どこで納得するのか」。人の動きは、画面の中でも同じだという。
“やめたら落ちる”SEOから、脱出させたかった
その後、クリエイティブエージェンシーや人材紹介会社で経験を積む中で、鳥井さんはある声を繰り返し耳にする。「SEOに毎月何十万も払っている。でも、やめたら順位が落ちそうでやめられない」。成果の可視化が弱く、契約を切る決断もできない——そんな状態に置かれている企業が少なくなかった。
だからこそ独立を決めた。目指したのは、依存を生む支援ではなく、自社で回せる構造を残す支援だ。
鳥井さんの提案は一貫して「ユーザーの行動」起点だった。例えば商品詳細ページ。ツーカラムが当たり前だった時代に、購入行動を最優先に考えワンカラムを提案するなど、“業界の慣習”より“見え方”を取った。いまでは一般的になった手法も、当時は少数派。だからこそ、「この人は本当にユーザーを見ている」と信頼を得られたのだろう。
組織の武器は、知見を溜めて回す仕組み
現在、同社は約15名体制。成果を出し続けるには、個人の腕だけでは足りない。鳥井さんが重視したのは、ノウハウを属人化させず、チームで再現できる状態にすることだった。
そのために導入したのが社内wikiだ。事業部ごとに「社内版Wikipedia」のような仕組みを整え、詰まったときは検索すれば過去の知見にたどり着ける。ケース対応が積み上がるほど、組織が賢くなる構造である。
さらに特徴的なのが、同業者を“社外コンサル”として迎え入れている点だ。競合ではなくパートナーとして捉え、知見を交換することで視野を広げる。客観的な助言が入ることで、社内の当たり前が更新され、結果として業界全体の底上げにもつながる——鳥井さんはそう考えている。
最近は組織構造も見直し、縦割りの事業部制からワンチーム制へ。責任と裁量の置き方を変えたことで、メンバーが「目標達成のために何をすべきか」を自走的に考えるようになり、結束も強まったという。
子会社という“未来の席”を増やしていく
同社は、北海道と愛知県での子会社設立準備を進めている。将来的には全国へ拡大し、グループ会社を10社規模に。グループ売上100億を目標に据える。
なぜ子会社にこだわるのか。それは、今いる社員、これから入る仲間が、「いつか社長になる」という選択肢を持てるようにするためだ。会社の成長は個人の努力だけではない。チームで築いた成果に対して、キャリアの未来を開いた形で返していきたい——その発想が設計思想になっている。
鳥井さんは、学生時代にアート制作で「水彩と色鉛筆を組み合わせる」という発想を評価された経験を今も覚えているという。常識を一歩越え、組み合わせで驚きを生む。EC制作も同じだ。ユーザー目線とアイデアを武器に、支援が不要になるサイト運用を増やしていく。それが同社の挑戦である。
【企業情報】
福岡ECサイト株式会社
- 本社住所:
- 〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前3-4-25 アクロスキューブ
- HP:
- https://fukuoka-ecsite.co.jp/
- 設立:
- 2022年8月
- 代表取締役:
- 鳥井 敏史