デジタルと人間力の融合で、建設業の未来を切り拓く

建設DXイノベーション部門

大真エンジニアリング株式会社 代表取締役 大地 一洋

北海道・札幌。建設業界の中で、アナログとデジタルを行き来しながら“これからの建設業の姿”を具現化しようとする企業がある。設備工事を中核に、金属・塩ビ加工、さらにはシステム開発まで手がける 大真エンジニアリング株式会社だ。大地一洋社長が掲げるのは、「デジタルとアナログの良さを掛け合わせ、快適空間を創造する」という独自の経営ビジョン。DX・AI・XRといった次世代技術の活用をはじめ、企業運営の哲学に至るまで、同社は建設業界のアップデートを全方位から進めている。

苦境から立ち上がった創業期──利己と利他を往復しながら辿り着いた経営観

大地社長が設備工事を個人事業として始めたのは2003年。当初は、前職の社長から請負継続を求められたことが“つなぎ”としての独立の理由だった。しかし、仲介先の不誠実な対応が相次ぎ、最終的には自身の責任で仕事を引き受けざるを得なくなる場面が続く。

そうして人脈が増え、仕事が増え、2006年頃に法人化を決断。2008年に法人を設立したものの、そこからが本当の試練だった。

売掛金の未回収、度重なるトラブル、大きな損失。2009年〜2011年にかけての苦難の連続で、社員は2名にまで減り、資金繰りは限界寸前。給与遅配となった時期もあり、この頃に大地社長は「企業とは何か」「人間とは何か」を深く見つめ直すことになる。

「利己」は企業として必要、しかし「利他」を忘れてはならない。この2つのバランスが腹落ちしたことが、その後の大真エンジニアリングの経営哲学の土台となった。

建設業界の“デジタル化以前”の時代に着手した先見性

意外に思えるかもしれないが、大地社長がデジタル化に踏み切ったのは 2005年頃。建設業界で「DX」の言葉が登場するよりはるか前、まだPCすら十分に普及していなかった時代だ。きっかけは父の「パソコンを覚えておけ」という一言。

最初はタイピング練習程度のものだったが、次第に業務効率化に可能性を感じ、請求書・見積書作成ソフトなどを導入。「計算が早い」「資料が作れる」といったメリットに触れるうちに、デジタル化の価値を確信するようになった。その意思決定が、今の大真エンジニアリングの“二本柱経営”につながっていく。

「工事部 × システム部」──業界でも珍しいハイブリッド体制

同社は現在、①設備工事を担う「工事部」②システム開発・ネットワーク構築・IoT支援を担う「システム部」という2つの事業部で構成されている。建設現場のアナログな工程と、ICT・ERPなどのデジタル技術が社内で完全連携しているため、工事品質・作業効率・情報共有のスピードが飛躍的に向上した。

クラウド連携したICTツールにより、「現場からリアルタイムに進捗共有」「資材発注を即時管理」「ERPで全工程を一元管理」といった仕組みが整い、設備工事業でありながら高度な“IT企業的側面”を持ち合わせている点が最大の強みだ。

利己・利他の両輪で経営する──利益は再投資と循環へ

大地社長は「利益は目的ではなく資源」と語る。利益を極限まで搾り取ることもできるが、それでは長続きしない。適正価格・高品質の提供、従業員への還元、地域社会への貢献──利益を“循環させる”ことで好循環が生まれ、企業は持続的に成長する。

実際に同社では、「デジタル化による残業削減」「柔軟な働き方制度」「キャリア支援体制の整備」など、従業員の環境改善を重視。その結果、「北海道働き方改革推進企業」「札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業」などの認定も受けている。また、地域清掃・寄付活動・教育機関との連携など、社会貢献活動も積極的に展開している。

歴史は“未来の答え”を示してくれる──経営者に必要なのは長い視点

大地社長がもう一つ大切にしているのが、「歴史に学ぶ」姿勢だ。

「新しく見える課題でも、歴史を辿れば必ず類似の事例があります。歴史の文脈を理解すれば、迷ったときの判断軸が得られるんです」

情報があふれる時代、人は“今の出来事だけ”に左右されがちだ。しかし、過去とつながる現在を意識することで、より冷静で正しい意思決定ができる。大地社長はこれを「経営の基礎体力」と呼ぶ。

XR・AI・ロボット──DXが建設業界にもたらす革新

大地社長は、建設業界のDXは「まだ発展途上」としながらも、今後急速に変革が進むと確信している。

▼ XRが変えるコミュニケーション

設計段階でXRを導入すれば、

完成イメージの認識違いが激減し、手戻りが大幅に削減される。

▼ AIロボットが担う次世代の現場

危険作業や重労働をロボットが代替することで、

安全性・効率性ともに飛躍的に向上する。

▼ DXは人材確保にも直結

デジタル化された現場は若い世代に魅力的で、

建設業界の人手不足対策にもつながる。

将来的には、「XR空間での施工打ち合わせ」「遠隔地からの設計作業」といった働き方が日常になるだろう、と大地社長は予測する。適応できる企業は飛躍し、できない企業は淘汰される──業界は大きな分岐点に差しかかっている。

最後に、大地社長はこう語る。

「これからの社会は、大変革期を迎えます。新しい技術を学び、挑戦し続ける姿勢こそ、日本が再び力を取り戻す鍵になる。そして忘れてはならないのは“人のつながり”です。デジタルとアナログ、利己と利他、そのバランスを取りながら社会に貢献していく企業こそ、次の時代を担う存在になるはずです」。

未来の建設業、そして日本社会をどうアップデートしていくか──大真エンジニアリングの挑戦は、そのヒントを提示している。

【企業情報】

大真エンジニアリング株式会社

本社住所:
〒001-0930 北海道札幌市北区新川810-1
HP:
https://daisin-e.co.jp/
設立:
2008年5月
代表取締役:
大地 一洋